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星と漁労

三上晃朗

日本は島国であり、古くから海との深い関りがみられる。その基盤となった漁業は、近代に入ると動力船の普及や漁具・漁法の発達で専業化が進み、大きな転換期となった。しかし、それまでは手漕ぎ船や帆船の時代で、生業は半農半漁を基本としながら、漁場も地先沿岸の海域に限られていたのである。
そうした時代に、海へ出た人びとが頼りにしたのは、気象や海洋等の自然環境であり、太陽や月も重要な指標となっていた。やがて、夜間の漁が開始されると、本格的に星を利用した漁業の幕開けを迎えることになる。
漁船が、機器や機材をほとんど装備していなかった当時、人が自らの五感で判断すべき情報は多岐に亘っていた。潮流や海底の地形から風向や雲の動き、さらに船の位置・方角・時の経過など、これらを精確に効率よく収集できるかどうかが、漁師としての大切な資質であった。

2024/2/6
Category: コラム
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