日本列島の考古資料・文献史料の分析と解釈に天文学の知見を適用すれば、信仰形態や祭儀神話の理解に飛躍的な進展が期待される。いかなる時代にあっても宗教観や宇宙観の形成に天体現象が深く作用したことは確実視されるからである。ただし人文科学の研究領域に天文学の見知を適確に応用することには困難が伴い仕切りが高く、またこの種の分析には恣意性が伴うとの批判もある。
本研究はこの点の克服に焦点を絞り、天体現象と関わる歴史的諸事象への統合的分析法の構築を目指す。そのため本研究では考古学・文献史学・天文学の各専門分野を横断する研究体制を組み、現地調査を併用しつつ各研究分野で蓄積されてきた従前の議論を点検・整理する。そのうえで天体現象に対する人間の認知構造の変遷と日本列島における特質の解明を目指す。併せて研究成果を社会にむけて還元する企画を立案し実施する。